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2009年8月

『時の娘』『魔術師(イリュージョニスト)』読了

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「人生って、大部分が幻想(イリュージョン)なのではないかしら」 「どういうことかね」 「だって、過去の出来事はすべて記憶でしょう?」 「確かに」 「そして未来は想像だわ。どちらも幻想よ。 -記憶は信用できないし、未来については、推測するしかできない。絶対に現実であると言い切れるのは、いまこの瞬間だけ- しかもそれだって、想像から記憶へ刻一刻と変化し続けてるわ。ね?人生の大部分は幻想なのよ」 (『魔術師(イリュージョニスト)』より)

気がつけばお盆も過ぎ、8月も終盤になってきています。今年の夏休みは2回に分けて取ることにしました。1回目は上司に合わせてお盆休みに。2回目は10月半ばくらいに、と考えてます。お盆休みの4日間は一日だけ近所の森林公園へ出かけた以外は、本を読んだり、たまっていたTV録画をチェックしたりしながら朝晩庭いじりを満喫して過ごしました。

お盆休み前に読んだのが、ジョセフィン・テイの『時の娘』。かの有名なリチャード三世は果たして本当に極悪非道な人物だったのか、という疑問を持ったグラント警部が、入院中のベッドの上で謎を解明していくとういう安楽椅子探偵ものです。以前、高木彬光の『成吉思汗の秘密』を読んだ時に、この作品に影響を受けたと書かれていたので、いつか読んでみようと思っていたのです。しかし、西洋史の知識が元々無い上に、バラ戦争、リチャード三世とピンポイントのところですから分からないことが多くて参りました(^^;) そして、何より大変だったのは、作中で語られている人物がどの人なのかを特定すること。巻頭に簡単な家系図が付いているのですが、何度そこをひっくり返して見直したことか(笑) リチャード、エドワード、ヘンリー・・・なぜこんなに同じ名前が~と半泣きです。しかも彼らは別名○○伯とか××卿などと呼ばれたりもしているので更に混乱。もう、何がなにやら分からなくなってきたところで一度投げ出し、ちょっと気持ちに余裕が出来てから再チャレンジ。最後まで読み終えました。挫折しかかった割には、意外と面白かったなぁというのが正直な感想です。山を越えるとあとは一気に最後まで。グラント警部の推理と助手に名乗りを上げたアメリカ人青年(名前を忘れました・・・)とのやりとりから導き出される話に魅了されます。巻頭の家系図よりももう少し詳細なものを手に入れたので、これを参考に再度読み直そうと思ってます。なんというか、スルメのような、噛めば噛むほど味が出る作品ですね。イギリス史に詳しければもっと楽しめると思うと欲が出ます。この作品から派生していろいろ楽しめそうです。

そして、ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライム・シリーズ『魔術師(イリュージョニスト)』。もうこれは、投げ出す間もなく一気読みでした。タイトルの通りイリュージョニストが出てくるのですが、作者自身がイリュージョニストのように様々な仕掛けで楽しませてくれます。そして、そのイリュージョンにすっかり幻惑されている内に、気がつくとハッピーエンドを迎えているのです。二転三転どころか四転五転六転する事件捜査に加え、今回はアメリアの昇進試験問題が絡んできます。こちらの問題もハラハラさせられますが、最後は胸の空くような結果がもたらされます。今回の事件の捜査協力者として登場するカーラという女性も魅力的です。イリュージョンの腕もさることながら、人間としての魅力に溢れています。ディーヴァー作品に登場する人物達は、善人も悪人もみんな生き生きとしていますね。そして、彼らが語る言葉には時折ハッとさせられたりするのです。この作品を読むと、自分が目撃した、体験したと思っていることが本当なのかどうか、ちょっと不安な気持ちになります。

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久しぶりに映画館へ

昨日、とても久しぶりに映画館へ行きました。観た映画は「アマルフィ~女神の報酬」。小説を読んだので映画も観てみようと思い立ったのと、去年行ったイタリアの景色がふんだんに出てくるようだったので、それが見たい一心でした。(以下、内容に触れたりもしますので、これから観る方は気をつけてください。)

結果、映画もそれなりに頑張っていましたが、やはり小説の方が面白かったな~と思いました。もちろん、それなりに面白かったし楽しめましたが、なんと言っても主人公の黒田というキャラクターがなんとなく中途半端なままだったのがどうにも納得がいきません。もちろん、映画と小説は別物ですし、現実に映像化するのは難しいであろう場面も小説には多々でてきますから、全てを同じように作るのは困難だと思います。ただ、黒田という主人公のクールな部分を強調しようとするあまりなのか、台詞を削りすぎていてなんとなく掴みどころの無い感じになってしまっています。まあ、それがミステリアスな感じと取れなくはないのですが・・・。

何より大きく違ったのは、黒田が邦人誘拐事件に関わっていく経緯です。小説では自らかなり積極的に邦人保護の名目で外交官という立場を超えた関わりをするのですが、映画では関わるつもりも無いし手助けするつもりも無かったのに、致し方なく巻き込まれてしまうことになります。ここは全く黒田の態度が違うところなので、ちょっと驚きました。

小説の中では、イタリアへ黒田が赴任した際に彼のプロフェッショナルとしての能力と危機管理に対するセンスを強調するエピソードがでてきますが、映画にはほとんど出てきません。この辺をもう少し映画に入れて欲しかったです。そうすると、その後黒田が取る身勝手にも見える言動がもう少し生きてくるのではないかと思います。

小説を先に読んだのでついつい比較してしまいましたが、別物と割り切った方が楽しめると思いました。

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