« 『エンプティー・チェア』読了 | トップページ | 虹 »

『ユージニア』読了

404371002x1 「一つの出来事を、たくさんの人の口から聞くというのは、興味深かった。逆に、事実って何だろう、と何度も考えましたよ。」(『ユージニア』)

以前から本屋さんで見かけるたび気になっていた『ユージニア』を読んでみました。とても不思議な感じのする作品でした。

過去に起こった大量毒殺事件の謎を、事件当時に関わった人々の証言で解き明かしていきます。しかも、既にこの事件について関係者に取材した上で書かれた小説があり、その著者も含めて再度関係者に話を聞いていく、という二重構造になっています。ほとんどが一人称の会話文体で綴られているので、初めはとても読みにくく感じました。しかも、それぞれの人の当時の記憶の集成ですから、同じ事件について語っているはずなのに、その人の置かれた立場や状況によってその時に見えていたもの、見ていたものは違っていて、まるで多面体の鏡に映った像を見ているかのようです。

読んでいる内に、何ともいえない不安な気持ちになってきます。めまぐるしく変わる視点とそこここに見え隠れする小さな悪意、怒り、嘆きが原因かもしれません。正直なところ、読後感はすっきりしません。それでもなんとなく惹かれてしまう、謎めいた力がこの作品にはあると思います。

|

« 『エンプティー・チェア』読了 | トップページ | 虹 »

読書」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/130455/45647541

この記事へのトラックバック一覧です: 『ユージニア』読了:

« 『エンプティー・チェア』読了 | トップページ | 虹 »