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2008年8月

『夏目家の福猫』読了

 51qitc2bxil_sl160_aa115_         著者は夏目漱石の長女の娘、つまり漱石の孫。著者が誕生した時に漱石は既に鬼籍に入っていたので実際に会ったことはないのだそうです。著者が親や親戚から聞いた漱石存命中の夏目家の様子や孫としての立場から見えてくる漱石の姿が描かれています。 文豪を夫に持った者、父に持った者、義父に持った者、祖父に持った者、それぞれの立場でのエピソードは興味深いものでした。(著者が以前に出版した2冊のエッセイ集から抜粋して1冊にまとめたものなので、内容は少し以前のものになっています。)

 漱石の長女筆子と小説家松岡譲とのエピソードは有名ですが、その二人の娘の目から見た両親の姿は、外からはうかがい知ることの出来ないものだけに、(子どもの欲目を差し引いてみても)興味深く読みました。現在、松岡譲の小説は書店では手に入らないようですが、いつか図書館で探して読んでみたいと思います。

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鏡花作、清方描く

先週、鎌倉の鏑木清方記念美術館へ 行ってきました。以前から行ってみたい美術館でしたが、今回「鏡花作、清方描く」というテーマで収蔵品展を行っていることを知り、会期が終わってしまう前にと慌てて出かけました。

鎌倉駅に着くとちょうどお昼時。同行した母がちょっと一休みしようと言うので、駅からほど近い「大納言」という甘味屋へ。母は甘いものに目がなくて、鎌倉へ来ると必ず立ち寄るのだそう。小さいがこざっぱりとしたお店で、二人して店員さんお勧めの抹茶あんみつに舌鼓。ほろ苦いお抹茶にたっぷりの寒天とその上につぶし餡がのっていて、黒蜜がトロリと掛かっているだけのシンプルなもの。甘さもしつこくないのですが、苦みのあるお抹茶が、さらに後口を爽やかにしてくれます。寒天がとても美味しくて、餡がちょっと苦手な私でもペロリと食べられてしまいました。私が行ったときは平日のしかもお昼時で空いていましたが、母によると休日はとても混むのだそうです。ここで美術館への道を尋ねたら、丁寧に道を教えてくださった上、招待券までくださいました。ありがとうございました。

P1010327_2 小町通りを歩いていき、案内板に従って左の小道を入っていくと小さな美術館の入り口がひょっこりと現れます。住宅街の中の普通のお宅の玄関のようなたたずまいなので、案内板が出ていなかった見落としてしまうと思います。門をくぐって奥へ進むとそこが美術館。行きたいと思っていたところへ来られた嬉しさで、ワクワクしながら見て回りました。

123 大好きな「一葉女史の墓」や「金色夜叉の絵看板」があり、しばし見惚れ、「小説家と挿絵画家」や「築地明石町」の下絵をしげしげと見て、その他の小説の挿絵を楽しみました。それぞれの小説を思い返しながら挿絵を見ていると、ドキドキしてきます。鏡花の本は装丁も挿絵も美しいので、これらの小説を発表された当時に読むことができていたら・・・などと、思っても詮無いことを思ったりしました。

P1010330_2 庭に面した展示室には様々な植物画があって、その他にも図録や 画集を庭を眺めながらのんびりと楽しむことができます。私が行ったときは百日紅の紅い花が満開。重そうな程に枝の先に付いた花が晩夏の日差しの中、風に揺れいていました。その展示室から見て右手奥には画室が再現されていて、実際に使用していたこだわりの品々が並び、それを子細に眺めるのも楽しい。

入り口のところにあるホールには、河辺の柳の下の縁台に、浴衣姿で団扇を片手に座っている女性を描いた軸が掛かっていました。夏の暑さをふと忘れるようなとても涼しげな印象の絵。これにもしばし見入って、その後ポストカードを数葉購入して美術館を後にしました。小さいけれど、私にとっては大満足の展示内容。時間を見つけては足を運びたい美術館です。

そして鶴岡八幡宮へ。源平池の美しい蓮を眺めて弁天様にお参りし、八幡宮の社殿には遠くから一礼してそこを後にしました。 P1010340_2 P1010335 P1010334

鎌倉駅の方まで戻って、急に空腹感を覚えて目に付いたお店に入りました。懐石と創作そば料理のお店、峰。大好きな茗荷と大葉が使ってあるらしい薬膳そばを注文。すると、予想以上に茗荷も大葉もたっぷりで、しかも刻んだ生姜と太った茄子の揚げ浸しも添えてあり、まず見た目で満足。食べてみると、茗荷、大葉、生姜の香りが鼻に抜けて、なんとも言えない爽やかさ。小ぶりだが太い茄子の揚げ浸しにはしっかりと味が浸みていて、とても柔らかい。一緒に頼んだおぼろ豆腐と蛸の唐揚げも美味しい。おぼろ豆腐には岩塩をちょっとふって食べるのですが、豆腐の旨味が引き立ちます。蛸の唐揚げは、熱々のサクサクとした衣と中の蛸の柔らかさを楽しみました。P1010345 P1010344_2 P1010347

好きな絵をゆっくりと楽しんで、美味しいものを頂いて、帰りはゴトゴト江ノ電で藤沢へ。充実の一日でした。

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blast!Ⅱ観賞

友人に誘われてblast!Ⅱを観に行ってきました。生演奏の迫力とスピード感、緩急のメリハリがあって楽しめる舞台でした。

あんなに激しく動きながら管楽器を演奏していても全く音に乱れがなく、時には演奏者がダンスパフォーマンスに参加したりもする。すごい体力です。特に、小さなトランポリンを並べたところに演奏者たちが乗って、ポンポンと飛び跳ねながら演奏し続けるのには驚きました。

バトントワリングの本庄さんのパフォーマンスも素晴らしかったです。まるで体内に磁石が仕込まれているように、宙を舞ったバトンが本庄さんの手の中へ戻ってくるのです。どういう仕組みなのか分かりませんが、体に沿ってバトンがクルクルと回転しながら移動します。そんな驚きが、時にはコミカルに、時にはしっとりとした雰囲気で踊られるダンスと共に披露されました。

気に入ったのは太鼓の演奏。演出が独特で、衣裳の腕や足の部分のラインとバチに蛍光塗料が塗ってあり、舞台照明は真っ暗。客席からはその部分だけが光って見えるので、暗闇に響くリズミカルな太鼓の音と相まって、何とも言えない面白さがありました。太鼓は、音だけ聞いていたときは和太鼓かと思ったけれど、洋太鼓でした。フルートも日本的なメロディラインの時はまるで尺八のような音を出して演奏していて、細かい演出に気を遣っている印象でした。そういえば、フルートを演奏している人が、意外にも筋肉質のガッシリした背の高い黒人の男性。こちらの勝手なイメージですが、一見するとサックスとかトランペットを担当しそうな感じ。でも、とても繊細で綺麗な音を出すので見た目とのギャップに驚かされました。

演奏が終わってロビーへ出ると異様な熱気に包まれていて、何事かと思ったら、出演者たちが観客を見送りに出てきていました。観客は比較的若い女性が多かったのですが、みんな興奮して写真を撮ったり握手をしたりして、とても嬉しそうでした。中には自分の楽器を持ってきている人もいて、楽器ケースにサインを貰ったりしていました。

曲目についてはちょっと不満が残りました。様々な曲の要素を取り入れたオリジナルの曲も良かったのですが、もう少し私のような初心者にも馴染みのある曲目も加えてくれると、もっと楽しめたのにな、と思いました。

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『祝山』読了

『祝山』加門七海・著(光文社文庫)読了。41qtsuvpgfl_sl500_aa240_

加門さんの作品は今までエッセイばかりで、小説は読んだことがなく少々不安でしたが、結構楽しむことができました。幽霊が出てくるわけでもないし、絶叫しそうな場面があるわけでもない。ちょっとした好奇心と欲が切っ掛けになって、否応なく巻き込まれてしまった主人公の困惑と苛立ち、追いつめられる恐怖感、縁が切れたと息をついたところで再び現出する繋がり・・・。特に派手な場面があるわけではありませんが、逆にそれが妙なリアリティとなって読む方は怖くなってくるのです。

この小説の元になっている話が、加門さんの体験談集の中で紹介されています。もちろん、小説とは大枠の部分しか共通点はありませんが、既にそちらを読んでいれば、あぁ、あの話・・・と思いつくことと思います。元の話もなかなか気味の悪い話でした。この体験談集も私は好きで、時折思い出しては取り出してランダムに読んだりしています。

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夏の風物詩

怪談やホラー小説の新作が続々と出るのがこの時期。私にとっての夏の風物詩です。

怖い話や不思議な話が好きなのに、映像で観るのはからきし駄目。観たこともあるけれど、怖い場面にさしかかると画面の登場人物と一緒に悲鳴を上げて目を瞑ってしまうので、決定的な瞬間を観ないまま・・・。 作り物と分かっていてもやっぱり駄目なのです。もちろん遊園地のお化け屋敷も大の苦手。何も見ていないのに周囲の音に驚かされて絶叫してしまい、友人に呆れられました。浅草花やしきにある見せ物小屋で、入り口脇にあった河童のしかけに絶叫した時など爆笑されてしまったし。たぶん、驚かされるのが苦手なんです。怖いも怖いけれど、それより物陰から不意に現れたり、突然大きな音がしたりすることに驚いて絶叫している気がします。

子どもの頃から小泉八雲や上田秋成の怪談、幻想譚は大好きでした。泉鏡花も大好きな作家の一人。これらの作家の作品は現代の所謂ホラー小説のような怖さとはまたちょっと違うけれど。現代のホラー小説もグロテスクなものが出てくるのは気味が悪いとは思うけれど、別段怖いとは思いません。どちらかというと明確な何かが出てくるわけではないけれど雰囲気や登場人物の心理状態で怖いと思わせるものの方がゾッとします。小池真理子の『墓地を見下ろす家』は救いのない結末も含めて、初めて読んだときに本当に怖いと思った作品。学生の頃に読んだので子ども向けなのですが、小野不由美の『緑の我が家』、『悪夢の棲む家』も怖くて、締め切った自室で読んでいたのに、何度も何度も部屋の扉を振り返ってしまいました。

今年は『怪談実話系』、『文豪怪談傑作選 小川未明集』、『文豪怪談傑作選 文芸怪談実話』、『江戸東京怪談文学散歩』、『祝山』を購入。まだ『怪談実話系』しか読んでいないけれど、来年の夏までじっくりと時間を掛けて読んでいこうと思います。

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